デムパの日記

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生き物好きの人には超お勧め! 「右利きのヘビ仮説 追うヘビ、逃げるカタツムリの右と左の共進化」

東海大学出版会から、「フィールドの生物学」というシリーズが出ています。
実験室で白衣着てすごい機械で遺伝子とか操作するのではなく、野外の生息現場へ出てデータを稼ぐタイプの研究について紹介するという方向性なのですが、このシリーズにはもう一つ大きな特徴があります。


執筆者の多くが、その道の大御所・大家ではなく、まだ終身雇用の職に就いていない、若手の任期付き研究員(ポスドク)なのです。


金儲けとか、すぐに役に立つとか、そういうのとは極めて縁遠いというか無縁のフィールド系の基礎生物学分野で、不安定な身分の中で知的好奇心の趣くままにもがく若き科学者たちの姿がとても眩しく感じられます。


特に今回紹介する細 将貴さんの「右利きのヘビ仮説」は、基本的に1種類のヘビとその餌となるカタツムリについてのストーリーですが、ヘビやカタツムリに興味のない人でも面白く読めると思います。
また、DNAとか分子とかそういう難しい話はほとんど出てこないので、文系の人や高校生でも、生き物好きなら難なく読めると思います。
「アフリカにょろり旅」を楽しく読めた人なら、(本書はやや硬派ですが)すごく楽しめると思います。

右利きのヘビ仮説―追うヘビ、逃げるカタツムリの右と左の共進化 (フィールドの生物学)

右利きのヘビ仮説―追うヘビ、逃げるカタツムリの右と左の共進化 (フィールドの生物学)


僕は生物学者を志しながら基礎医学系へ転向し、さらに現在は職業研究者ですらないわけですが、この本を読んで進化生物学を学んでいた修士課程時代のことを懐かしく思い出しました。
お金がなくて学会にモグリで参加したり、青春18切符で遠方の研究会や若手の会に参加したり、実験に明け暮れて恋人と別れたりとか、いろいろあったなぁ。


とにかく、この本読んで、生き物熱が再燃してしまいました。


生物学、特に個体レベル以上のフィールド系基礎生物学は、すごい機械や大金がなくても研究できる面白いテーマがまだまだたくさん眠っているはずです。


ということで、このシリーズは全部面白いですが、とくに本書はおすすめです。


いまのところ9冊が刊行されている本シリーズ。
まだ未読のものも何冊かあるので、そちらも早く読んでみたいです。
今後も面白い本が続々出てきそうで、大いに期待しています。
東海大学出版会の編集の人は、ホントにすごいですね。

アリの巣をめぐる冒険―未踏の調査地は足下に (フィールドの生物学)

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孤独なバッタが群れるとき―サバクトビバッタの相変異と大発生 (フィールドの生物学)

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共生細菌の世界―したたかで巧みな宿主操作 (フィールドの生物学)

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テングザル―河と生きるサル (フィールドの生物学)

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サイチョウ―熱帯の森にタネをまく巨鳥 (フィールドの生物学)

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熱帯アジア動物記―フィールド野生動物学入門 (フィールドの生物学)

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モグラ―見えないものへの探求心 (フィールドの生物学)

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虫をとおして森をみる―熱帯雨林の昆虫の多様性 (フィールドの生物学)

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