デムパの日記

あるいは「いざ言問はむ都鳥」普及委員会

サンガー死す

ずいぶん前の話ですが、フレデリック・サンガー博士が亡くなりました。
蛋白質を構成するアミノ酸残基の配列を決定する方法を開発したことで1度目の、そして次にDNAの塩基配列を決定する方法を開発したことで2度目のノーベル化学賞を受賞した巨人です。
(化学賞は生理学医学賞と違って複数回受賞が禁止されていないのですね)


職にしがみつくことなく程よい年齢でさっさと引退し、庭仕事に精を出して余生を送られた博士。
きっと幸福な人生だったことでしょう。
博士の開発した方法を改良した「エドマン分解法」は、田中耕一博士らによる質量分析計による蛋白質のアミノ酸配列決定法が実用化されるまで、蛋白質解析法の主流であり続けました。
僕がエドマン分解法で決定した最初のアミノ酸配列はたった8残基でしたが、その配列は20年以上経った今でも覚えています。
僕はその配列に基づきプライマーを設計し、PCR法(型破りな性格と人生で知られるマリス博士が発明し、この功績でノーベル化学賞を受賞)で遺伝子DNAを増幅しました。
増幅したDNAは、発明者の名から「サンガー法」と呼ばれる方法でその配列を決定し、そこから研究対象の蛋白質の前アミノ酸配列を決定しました。
(サンガー法は、次世代どころか第3、第4世代のDNAシーケンサーが続々と発売されている今ででもなお、一定の存在感を保っています)
言ってみればサンガー博士なくして僕の分子生物学的研究は成り立たなかったわけです。
(PCRにもずいぶん助けられたけど、こちらは無くてもなんとかなっただろうと思う)
サンガー博士のご冥福をお祈りします。
フレデリック・サンガー(Wikipedia)