デムパの日記

あるいは「いざ言問はむ都鳥」普及委員会

原生動物のこと

ノーベル賞がらみで原生動物について書いてみる。
原生動物とは、単細胞真核生物のうち、運動性があるとか、光合成をしないとか、とにかく植物ってよりは動物じゃね?って感じの生き物の総称だ。
(このなかで病原性があるものを特に「原虫」という)

動物っぽいか植物っぽいかは感覚的には受け入れやすいが、クロレラが共生していて光合成するミドリゾウリムシ(動物系)とか、鞭毛運動で激しく動き回るミドリムシ(植物系)とか、境界線上に乗ってくる奴らがいるのでやっかいだ。
線引きは所詮恣意的なものにならざるを得ないし、連続的なものを無理に二つに分けるのもなんだかなぁということで?学問的には両者をあわせて「原生生物」とくくられている。

学部学生のころ出入りしていた研究室がこの原生動物を扱っていた。
卒業研究のテーマにはならなかったが、4年くらいその研究に関わり、小さな学会で発表させてもらい、何本かの論文にも名前ものせていただいた。
扱っていたのは原生動物の中でも「繊毛虫」と呼ばれるグループで、2度のノーベル賞に輝いたテトラヒメナの他、ゾウリムシやラッパムシなどがもこの仲間だ。
今日では、研究とはヒトの培養細胞やマウスを使ってするものといった風潮が強いが、30年くらい前はゾウリムシ、粘菌、ウニなど、いまでは少数派になってしまった実験動物の研究が盛んだった。

役に立たない研究はヤメロ的な考えのヒトが多い世の中。
知名度の低い生き物の基礎研究は、どうしても軽視され予算も付きにくい。
みんなが貧乏だった時代はともかく、今日では最低限の予算と設備がないとまともな研究はできない(天才であれば別なのかもしれんが、そんなのはごくごく少数だろう)。
多くの人が役に立つと認める研究だけしていたら、科学はこれほど進歩せず、役にも立っていなかっただろう。

リボザイム研究に続いて、テロメア研究でも繊毛虫テトラヒメナがブレイクスルーをもたらし、ノーベル賞につながった。
今回のノーベル賞が、非モデル生物の研究に光が当たるきっかけになればいいのだが。