デムパの日記

あるいは「いざ言問はむ都鳥」普及委員会

除菌、消毒、殺菌、滅菌

昨日のapjさん経由ネタの続き。

病原体を減らす・殺すと言う意味で使われる言葉には、滅菌、殺菌、消毒、除菌などがある。
厳密な定義は消毒の専門書なりを見てほしい。ちなみに仕事場にはこの本があった。

消毒と滅菌のガイドライン

消毒と滅菌のガイドライン

ここでは僕の知識の範囲で、おおざっぱに説明しようと思う。

なお、対象が人体だったり食品だったり衣類だったり家屋だったり医療器具だったり、ものの性質によって様々な方法が使われるので、具体的なことは必要に応じて各自調べてほしい。

ということでまず「除菌」、これは薬事法逃れ薬事法に定める消毒薬の定義に当てはまらないんだけど、たしかに菌を殺したり減らしたりする効果は(自社や大学などで)証明されている家庭用製品のためにひねり出した「言葉」と言っていいと思う。
医療や食品製造の現場では使われない用語だ。

本当は「殺菌作用あり」と言って商品を売りたいんだが、薬事法の関係で家庭用品に殺菌という言葉を使うのは難しい。そこで除菌という言葉を使っている。
まっとうな「除菌」製品は、普通〜弱い消毒薬と思っておけばいいだろう(実際効果はある)。
まあ、家庭用の石けんだって、細菌やウイルスに対しての殺菌力はある(効かない菌・ウイルスもあるが)。
流水で洗うという行為には、「洗い流す」という効果も大きい。

次に「消毒」、これは除菌の強いヤツwくらいに思っておけばいいだろうか。
「消毒薬」については、薬事法のお墨付きを得て販売されているので、正しく使えば表示されているターゲットに対して有効である。ただし効果が確実な分、使い方を誤ると人に害があったりするので要注意。
だいたいは、○○菌に有効、△△菌には高濃度でやや有効、××菌には無効などと書いてある。
アルコール、界面活性剤(いわゆる石けんだ)、その他薬剤(次亜塩素酸塩溶液とか)などいろいろ。
他に物理的方法として、煮沸とかもある。ただし煮沸で死なない病原体もいる。

そして「殺菌」、これは特定の菌やウイルスをきっちり殺すってかんじだろうか。
正直、殺菌と消毒の違いは僕にとってははっきりして無くて、作業や文脈で感覚的・慣例的に使い分けている。
たとえばアルコール消毒は、70〜80%程度のエタノールに浸漬することで「アルコールに弱い」菌やウイルス「だけ」を殺す。大半の細菌もこの方法で殺すことができる。
その意味ではアルコール「殺菌」なんだが、通常そういう言い方はしない。
塩素消毒も同じ。あとは塩化ベンザルコニウムとか、ヒビテンとかも消毒薬として使われる。
それぞれ得手不得手があるし、もちろん食品の殺菌に残留性のある薬剤は使えないので、状況によって使い分けられている。器具の消毒には使えるけど、傷口の消毒には使えないとか。

最後に「滅菌」、これはそこに存在する全ての菌やウイルスを殺し尽くすってかんじ。
方法としては、エチレンオキシドガス充填、ガンマ線照射、180℃での加熱(乾熱滅菌)、121℃の高圧蒸気など。いずれも十分な量・時間で処理する必要がある。表面だけ180℃になってても、内部が40℃とかではね、意味がない。内部まで設定温度になるまで(そしてその温度が設定時間保持される)キチンと加熱する。

注射筒や注射針はガス滅菌かガンマ線滅菌が主流だが(加熱殺菌ではプラスチック溶けちゃうからね)、
どんな場合でも1回使い切りで、決して使い回しはしない。
あと、針を刺したりといった人体への侵襲行為は、医師・歯科医師、それらの指示下の看護師・検査技師、鍼灸師など国家資格を持った人にしか認められていない(とはいえ緊急時はどうなんだろう?)。
しかも医者でも滅菌に関する知識がいまいちな人もいるようだ。
相手の資格や知識に注意しよう。既知・未知の病原体に感染したくなければ、ね。

このほかにも抗生物質とか、殺菌と静菌の違いとか、手洗いとゼンメルワイス、消毒とリスターなど書きたいことはたくさんあるんだが、話がややこしくなるし、これまででも十分うっとうしい文章だと思うので、今日のところはこの辺で。