デムパの日記

あるいは「いざ言問はむ都鳥」普及委員会

生き物好きな人に超お勧めな本、第2弾!

最近買った本ですごくオススメの一冊です。

ダニ・マニア―チーズをつくるダニから巨大ダニまで

ダニ・マニア―チーズをつくるダニから巨大ダニまで

かなりインパクトのあるタイトルですが、一部の?人々の手を払いのけているような気がしないでもない(笑)


ダニの専門家による、一般向けの書籍です。
冒頭のフランスでのエピソードには驚かされましたが、至極まっとうな本です。


僕は仕事の関係で、人に激しく害のあるダニ(例えばツツガムシ)とか、ご家庭で問題になるような種類のダニ(食品にたかるコナダニの仲間とか、タカラダニの仲間←ただしこいつは基本的に人に害はありません)とかに関わったことがあり、ダニについては基本的な知識とか同定手法についてもそこそこ知っているつもりでしたが、本書を読んで、自分の知識があくまでごく一部の有害な種についてのものにすぎなかったことを思い知らされました。


こころはいつでも生物学者とか自称しておきながら、なんとも恥ずかしい。


そんな感じだったので、本書を読むまで人畜農作物に無害なダニの存在を意識したことはほとんどありませんでした。
この本を読んで、「日本で記録されたダニは約1,800種で人を吸血するダニはそのうち約20種のみ」
ということを初めて知りました。

実際には人畜無害なダニたちは、森林土壌で分解者としてとても重要な役割を果たしているのですね。
(主要な分解者はシロアリと真菌類だと思っていました)
森林の土壌中に、1㎡あたり万単位のダニが存在するとはびっくりです。
これだけの個体数がいるにもかかわらず、有害なダニの研究者ですら数えるほどしかいないという日本のダニ研究者の層を考えると、日本にもまだまだ新種のダニがいっぱいいるのではないかと感じます。
生物多様性とか流行ってますが、ダニなどの土壌中の微小な生物研究へのサポートがもっと必要ですね。


以前紹介した東海大学出版会の「フィールドの生物学」シリーズに比べると、著者の苦労話が少なくてその分ダニについての知識が盛り込まれている感じで、ほんのちょっとだけ学術よりの本ですが、著者のソフトな文章はそういった「お堅い」部分の敷居をかなり下げてくれています。


巻末には参考文献・書籍リストや、ダニの観察方法(ダニを顕微鏡下で解剖して観察する方法は初めて知りました)も書かれており、本書はダニについての入門書として優れているだけでなく、実際に自分でダニを観察してみようかなという気にさせられる良書です。
天体望遠鏡より先に顕微鏡買うんだったかな(苦笑)
ただし、ダニの解剖はともかく、同定レベルでの観察は実体顕微鏡では厳しいでしょうね。
位相差顕微鏡くらい必要なのかな?


この本を読んでダニについてかなり興味が湧いてきました。
著者の島野さんはダニがご専門のようですが、それ以外の土壌生物(原生動物とか)も研究されているとか。
(元原生動物屋の血が騒いでしまいますねぇ)
真面目な話、宝くじで一等賞が当たったら、日立の小型走査電顕(たったの数百万円で買える電子顕微鏡。家庭の100V 電源で作動!)と実体顕微鏡と位相差顕微鏡を買って、著者に弟子入りしようと思っています。


ということで、生物学を志す人や生き物好きだけでなく、ダニ嫌いな人にもぜひ本書を読んでもらいたいと思います。
みんな買ってね!