デムパの日記

あるいは「いざ言問はむ都鳥」普及委員会

ヒトとマンモス 北極圏の戦い

アメリカの科学雑誌「Science」に面白い論文が出ていたので紹介します。
オリジナル論文はこちらEarly human presence in the Arctic: Evidence from 45,000-year-old mammoth remains
解説記事はこちらGrisly find suggests humans inhabited Arctic 45,000 years ago
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ロシア科学アカデミーのヴラジーミル・ピトルコらの論文です。
2012年に著者の一人であるアレクセイ・ティホノフ率いるグループが、北緯72°のエニセイ湾岸の岸壁から、ケナガマンモスのわずかな軟組織を含む完全な骨格を発掘しました。
ちなみに第一発見者は11才の男の子だそうです。

コブに多量の脂肪が存在したことから、死亡直前の健康状態は良好であったことがわかりました。
また、歯の解析からこのマンモスは15才のオスである事も判明しました。
さらに炭素14を用いた年代測定法により、マンモスが死んだのは4万5千年前と推定されました。

このマンモスの骨には、多くの奇妙な損傷がありました。

死後の損傷だけでなく、生前につけられた、頬骨を貫通する傷、横たわった状態でしかつけられない傷、出血多量で殺すために大動脈を狙って(この方法はアフリカでの象狩りで使われているそうです)、し損ねた時の傷など、明らかにこのマンモスが尖った武器でヒトによって仕留められたことがわかりました。
論文では、投げ槍で付けられたと思われる多数の傷の状態がこと細かに記述されているのですが、残酷描写が続くので省略します(苦笑)。

これまで旧石器人類の北極圏進出は3万5千年〜3万年前頃と考えられていたのですが、今回の発見により、想定の1万年も前から人類が北極圏に進出していたことが直接的に証明されました。
このことは当時のヒトが極寒の地域を含む地球上のほぼどこにでも移住する能力があったことを示してます。

定住して文明を築く以前、狩猟生活をしていた我々の4万5千年前のご先祖様たちが、投げ槍片手に巨大なマンモスを仕留めていたかと思うと、人類の闘争心とかしぶとさを見せつけられた感じで、やっぱりヒトってすごいなぁと思いました。