ヒトのノロウイルスの培養に成功すれば3大誌(ネイチャー、サイエンス、セル)に間違いなく載ると長い間いわれてきましたが、ついに成功したという論文がアメリカ科学振興協会のScience誌*1に掲載されました(8月24日付電子版)。
Replication of human noroviruses in stem cell–derived human enteroids
しかもREPORTSではなくRESEARCH ARTICLEとして掲載されるという快挙です。
その感染性の高さから、今では冬場どころか通年の下痢性感染症としてすっかり有名になりましたが、培養困難微生物である事からその研究は、ほぼ集団感染事件や食中毒などの疫学データからの解析に限られてきました。
STATという免疫系で働く遺伝子を破壊したマウスがバタバタと死んだ事件から偶然見つかった、マウスノロウイルスの感染モデルはありましたが、ヒトのノロウイルスについては健常人ボランティアによる感染実験や、同じく健常ボランティアからちょん切ってきた腸の組織を使うしか方法がなかったので、今回ヒトの培養細胞での培養法が開発は病原性に関与する遺伝子の解析やワクチン開発に新たな道を開くことになりそうですね。
8月26日付けの同じくScienceに、マウスノロウイルスの受容体を発見したという報告も出ました。
Discovery of a proteinaceous cellular receptor for a norovirus
今回受容体として同定されたのは細胞膜に存在するCD300LFという免疫グロブリンスーパーファミリーの蛋白質です*2。
CD300LFの遺伝子を完全に破壊したマウスは、マウスノロウイルスに感染しないことが示されています
ノロウイルス研究は今後一気に加速しそうで楽しみです。