デムパの日記

あるいは「いざ言問はむ都鳥」普及委員会

ダウン症候群の治療薬

とある方からダウン症治療薬の情報についての意見を聞かれた。
実はつい最近Science Translational Medicine誌に"ダウン症モデルマウスでの記憶障害がノルアドレナリン系薬剤で改善できた”という論文(英文要旨)が出たばかりだった。
全文は有料だったので15$出してダウンロードしてちまちまと訳しているが、すでにわかりやすい解説がここにあった。
ちなみにダウン症そのものについてはこちら


で、てっきりそのことかと思ったら、そうではなくエーザイのアルツハイマー病治療薬アリセプト(ドネペジル塩酸塩)についてだった。
調べてみるとエーザイはアメリカであ小児ダウン症治療としてアリセプトの臨床試験を実施していて、すでにフェーズ3に入っていることがわかった。


アリセプトはアルツハイマー病の治療薬とはいっても症状を劇的に改善するわけではなく、早期投与で症状の進行を遅らせるというやや消極的な薬だ。
とはいえ他に有効な薬はなく、現状唯一のアルツハイマー病薬といっていいだろう。


ダウン症では青年期以降に急激な退行が見られることがあり、また比較的若年からアルツハイマー病を発症することが知られている。アルツハイマー病に関わるアミロイドの遺伝子が21番染色体上に存在し、ダウン症ではその染色体が常人より1本多く3本なのだ。単純に考えると、一般人が平均60才でアルツハイマー病になるとすると、ダウン症では40才といった感じか。
もちろん、我々がみなアルツハイマー病になるわけではないのと同じく、ダウン症でもアルツハイマーにならない人は多い。ただ発症率は明らかに一般より高く、さらに発症する年齢は低い。
国内でも長崎大学などで小規模の治験は行われているようだ。
どうやら悪くない結果が出ているようだ。


過度な期待はすべきではないが、なんとなく希望が持てそうな話ではある。
アリセプトは「アルツハイマー病治療薬」として国内で承認されている薬だから、安全性についてはある意味お墨付きが出ているといえる。もちろん老齢者と小児では薬物動態も違うだろうから過信はできないが、全くの新薬に比べれば危険性は低いと思われる。
ダウン症患者のアルツハイマー病に効くのは間違いないだろうし、さらに青年期の退行にも効果があるとなればすばらしいことだ。
残念ながら近所ではまだ治験はやっていないようだし、遠方まで定期的に通う時間的・金銭的余裕もない(長崎どころか東京にだって毎週とか通ったら破産する)。

本当にうまくいているなら数年内に国内でも大規模な治験があるだろう。
ということで、今は臨床試験の結果を希望を持って待ちたいと思う。


Attendre et espérer !