デムパの日記

あるいは「いざ言問はむ都鳥」普及委員会

わが青春のとき

わが青春のとき (1982年)

わが青春のとき (1982年)

研究というのは孤独な作業である。山師といってもいいかもしれない。
そこに金鉱があると信じて掘らなければ何も出てこないが、掘ったからといって出てくるとは限らない。
しかも一番乗り(同着一位も、まぁ可)以外には何の意味も与えられない(もちろん金も名誉もキャリアも)。
一位でなければ存在していなかった、何もしなかったのと同じ。
すばらしい成果を出しながら、タッチの差でライバルの論文が超一流の学術誌に掲載され脚光を浴びる。
ライバルと全く同じ成果を出していた彼らの成し遂げたことは、その場に居合わせた人の記憶にしか残らない。
でも、その成果を出した瞬間の、世界中で、いや、人類の歴史上で初めて自分がその謎を明らかにしたのだという達成感!あの快感を一度知ってしまうと逃れることは難しい。

この本「わが青春のとき」は、僕が科学者を志す上で決定的な影響を与えてくれた本だった。
まぁ結局のところ僕は科学者にはなり損なったわけだがw
科学者を夢見る若者にはぜひ読んでほしいと思う。
既に絶版で古本屋を探すしかないんだけどね。ぜひ文庫化してほしいところだ。
もともと石坂浩二主演のTVドラマの脚本で、小説ではない。
あと残念ながら僕はドラマの方は見ていない。

人並みの幸せも、恋も、経済的安定も、老後の年金も(笑)全てを捨てて研究にかける若者たちがたくさんいる。
奨学金という名前の「学生ローン」をしょって、無償(それどころか金を払って)日本の科学を支えている。
(彼らはIT土方ならぬ、ピペット奴隷「ピペド」と呼ばれている)
もっと彼らに光を当てないと、すばらしい可能性を秘めた若者たちが、夢のない職業に進んだり海外に去ってしまう。
新卒絶対主義の日本では、科学者崩れに就職の道はほぼ皆無だ。
非常勤講師のバイトで食いつないで、結婚もできず、老後は無年金で生活保護か?
今の若手への出費をけちることで、結局は(トータルで)国の出費がかさむ気がするんだが。
もったいないなぁ。