デムパの日記

あるいは「いざ言問はむ都鳥」普及委員会

Muse細胞かiPS細胞か

昨日の続き。
件の論文がダウンロード可能になっていたので、Muse細胞の第1報とあわせて昼休みにざっと流し読みしたんだが...
なんかすっきりしないなぁ...
(そもそもMuse細胞っていう定義をする必要があるのか?)
繊維芽細胞集団の中に存在する一部の未分化な細胞ものがすごくiPSになりやすいってだけで、iPSそのものを否定する内容ではないと思うし、他種の幹細胞や、終末分化したT細胞やNKT細胞からiPSが誘導されている事からして、繊維芽細胞限定の特殊事例と見ても良いんじゃないかとも思える。


Twitter上でもその道のプロほど冷静or懐疑的名コメントが目立つように思える。
よくわかってない人たちは「Museマンセー!山中iPSオワタ!」みたいなこと書いてるけど、それはまったく違うと思う。
まぁ当該論文も「ヒトの繊維芽細胞では」と限定した上ではあるが、「全てのiPS細胞はMuse細胞から」と大風呂敷広げてるし、さらに新聞報道ではそれが「iPSは実はMuseだった!」なんて省略されて報道されてるから仕方ないのかもしれないね。


少なくとも今回の論文は従来のiPS細胞の重要性や、山中教授のこれまでの業績にはほとんど影響を及ぼさないのではなかろうか。
百歩譲って、エリートモデルとストキャスティックモデルの可能性について山中教授はストキャスティックモデルの方が矛盾がないという立場だったが、繊維芽細胞ではエリートの方が超優位だった、といった程度か。


Muse細胞自体が、発表から日が浅いからか、類似の細胞を発見したというPLoS ONEの論文くらいしか追試?されていないみたい(論文検索でHitしない)わけだが、今回の論文でiPS研究に大きな一石を投じた(むしろ喧嘩を売ったに近い?)わけなので、今後は多くのラボで一斉に検証が始まるだろう。
それらの結果が出てくるまでは、話半分or過小に見積もっておいた方が良さそう。