デムパの日記

あるいは「いざ言問はむ都鳥」普及委員会

ダウン症候群の予防薬その後

ダウン症は21番染色体が3本存在することによって起こる身体的・知的発達障害だ。
小さな体、言語機能、知的能力の発達不全、特有の容貌、心奇形等のほか、若年性のアルツハイマー病や白血病を発症する確率が高いことが知られている。

今現在、ダウン症の予防・治療に効果のある薬はない。
過剰の21番染色体上の遺伝子が作るタンパクの機能を阻害する薬剤などがあれば治療薬の候補にはなるが、ダウン症では厳密に制御されるべき遺伝子の発現が150%になっているわけで、それを上手に阻害して100%に戻すってのはかなり微妙な制御が必要だと思う。でもまぁ、ぴったり100%に戻せなくても120%くらいになるだけでも病状はかなり改善するだろうから、その恩恵は計り知れないものがあるとは思う。
もっとも受精の瞬間から150%の効果は始まっているわけなので、出生直後から治療を開始したとしても、完全に健常者レベルになる事はないのだろうけど。

ちなみに原因遺伝子の存在する領域はほぼ完全に特定されている。
その領域内のいくつかの遺伝子についてはダウン症発症との関連が確認されているが、まだまだ解明すべき点が多い。


 根本的な予防としては、精子や卵を作る時だけに生じる特殊な細胞分裂である"減数分裂"の時の分配ミスを許さないような薬剤が必要になるが、今の所そんな薬はないし、減数分裂が起きる時期のことを考えると、そのような薬が開発されることはないだろう。
 

 最後に生臭い話をすると、現状では出生前診断(羊水穿刺による細胞診)で堕胎することは可能で、日本を除く先進諸外国では出生前診断が積極的に行われており、英国などでは費用は公費負担。米国ではこの検査のことを説明されずに障害児が生まれたとして、病院側が巨額の賠償を支払ったケースもあるほどだ。
個人レベルでは、羊水穿刺のリスク、堕胎に対する倫理的感情的な問題など、悩ましい。
国内医療機関は「聞かれたら答える」「資料を他の多くのパンフレットと一緒に陳列」という対応のところが多い。


このような状況の中、ここ数年、抗アルツハイマー薬をダウン症に適用する臨床試験が行われている。
去年の日記にも書いたが、ちょっとだけ進展があったようなので、明日はそれについて書いてみようと思っている。