デムパの日記

あるいは「いざ言問はむ都鳥」普及委員会

知的障害児を「治療する」ということ-ダウン症の治療薬-

僕のお気に入りサイトの一つである「サイエンスあれこれ」に、続報!ダウン症改善薬という記事が掲載されていた。
中身は従来から言われていた「アルツハイマー病の治療薬がダウン症(の退行現象*1)の治療に有効」というものなんだが、この中でダウン症の子を持つ親の半数以上が「治療薬ができても使用しない」あるいは「治療薬の使用するどうか迷う」と答えたというのだ。


これに関してはいろいろ難しい点があって、例えば出生直後にダウン症であることを告げられた親ならほとんどの人が治療薬の使用を望むだろう。
また、思春期以降の顕著な退行現象が始まったばかりの子を持つ親もかなりの割合が治療を望むと思う。
逆に、これら以外の状態・段階の子を持つ親は、「障害のない我が子」をイメージしづらくて治療を忌避する気持ちが強くても不思議はない。
ようするに、かなり強引なアンケートあるいはその集計があったことが想像される。


僕自身、ダウン症という障害を持たない娘は想像できないし、ダウン症という平均から大きく(病的に)逸脱した個性を持った娘をとてもいとおしく思っているので、彼女が突然健常児になったら、それは混乱すると思うし、薬を一粒飲んだら突然目の前にいる娘が「障害を持たずに生まれて今まで育ったらこうなっていたであろう娘」に変貌したらと思うと、鳥肌が立つ。
そんなの僕の娘じゃないw
(このへんは以前Twitterで@sora_papaさんとお話しして初めてイメージされた)


ただ、幸か不幸か現実問題として今開発途上のダウン症治療薬は、せいぜい知的障害の進行を遅らせるor今より悪くならないようにする、かなりひいき目に見ても「気持ち改善してるかな?」程度のモノなので、薬が利用できる環境になれば僕は躊躇することなく臨床試験なりに参加すると思う。


まぁ簡単に言うと今回の記事自体に不満はないのだが、紹介されている記事については「アンケートの内容にちょっと問題があったんじゃないかな?」と思うんだよね。


知的障害児を持つ皆さん、健常な子を持つ皆さん、子供のいない皆さんはどう思う?

*1:ダウン症における退行現象というのは、思春期以降に短期間で意欲の減退、言語能力の後退、排泄のコントロールができなくなるなどの、これまでできていた事が急にできなくなる状態を指す